今のところ書店員の日記

書きおこしてみたい、考えたこと思ったこと

スターでいるということは

昨日深夜、BSで放送していた宝塚歌劇団雪組の2014年の公演「星逢一夜/Esmeralda 」を見た

 

幼い頃、母の実家に遊びに行くと、叔母が熱心な宝塚ファンだったのでVHSや書籍や雑誌がたくさんあり、よく見せてもらっていた

子供ながらに華やかで独特なあの世界観にドキドキしたし、単純にお芝居やレビューがおもしろくて夢中になって見ていた

地元で行われる地方公演を見に連れて行ってもらったりもした

初めて観たときは、ビデオで見ていた世界が目の前にあって、本当に輝いていてまぶしくて、そして実物のタカラジェンヌたちの麗しさと迫力に圧倒されて、これは夢の世界なんじゃないかと思った

そんなこんなでわたしも宝塚をふんわりと好きなまま育ったが、中学校に上がる直前に、叔母が長年応援していたタカラジェンヌが退団することになった

その人はたぶん、そのまま続けていればトップスターになれたくらい実力と人気のある人だったと思う

でも叔母になぜ辞めてしまったのだろうと聞いてみると、トップスターになるとやらなくてはいけないことも多いし、何より大変な重圧がかかる、やりがいのある役を演じつつ、のびのびと表現できる3、4番手が彼女の居場所だったのかもしれない、とのことだった

その人の退団公演のチケットを激戦を制して入手し、叔母と共に東京の宝塚劇場に見に行った

電車を乗り継ぎ、大都会の真ん中にある劇場でその人の最後の芝居や歌や踊りを見て、不思議な気持ちのまま劇場を出て、出待ちをした

きらびやかな舞台を降りる決意をした彼女の表情は晴れやかで、花の一生は濃くも儚いものだなあと思った

それからは叔母ものんびりしたペースのファンになり、わたしも叔母と母と3人で数年に一度東京の公演を観に行くくらいになっていた

 

昨夜見た公演でトップスターをつとめていた早霧せいなさんは、先月歌劇団雪組を卒業し退団した

2014年から3年間、いくつもの話題性の高い役や、雪組ならではの日本物と呼ばれるお芝居をこなしてきた、実力派で熱血漢、そして大変な人気のある男役だった

久々に公演を観に行こうかとも思ったけれど、なんだかんだとしているうちに卒業してしまった、惜しいことしたな

映像や雑誌でしか彼女を見てこなかったが、トップスターであるというだけですでにあらゆるものを背負って戦ってきたのだろうということは想像に難くないけれど、それだけでなく大変な人気を誇り、チケットも即完売、動員数は立ち見客も出だことで全日100%を超えたというから驚き

そして昨夜の芝居を観て、とても納得がいった

 

たくさんのファンを魅了し、組と劇団を背負って走るトップスターの存在は、試練を乗り越え逆境でもたくましく咲く大輪の花のようだな、と久々に宝塚に触れて思った夜だった